HoloLensの正式公開が来年中、とだいぶ先なニュアンスで発表されたことで少々がっかりしております。
世間の関心もまずは2016年初頭に公開されるというOculusRiftの方に向いているのではないでしょうか?
ここへ来て個人的に少し興味深いニュースが発表されました。
8/10 GIZMODO「Oculus Riftで遊べるSecond Life、2016年末にリリース」
( http://www.gizmodo.jp/2015/08/vrsansaroculus_rift2016.html )
「Second Life」と聞いて「ああ、そんなのあったっけ」と忘れかけていた記憶を手繰る方も多いのではないでしょうか?
2007年頃に日本でも流行しかかった3D仮想空間です。
アバターを使って自由に3D空間内を行き来し、自分で建物や衣装などを作ることもできる、しかしゲームと違ってストーリーは無い,、という画期的なサービスでした。
日本では途中で一気にしぼんでしまいましたが、サービス自体はあれからもずっと続いています。画質のクオリティも当時からはぐっと上がっており、美麗なコンテンツも増えているようです。
その「Second Life」の開発元である「Linden Lab」が来年来年初頭に、Oculus Riftで体験できるVR版「Second Life」の開発を進めているというニュースです。
開発プロジェクトのコードネームは、「Sansar(ヒンディー語で「世界」という意味)」。
なじみのないネーミングです。
このニュースだけを見ても「Second Life」と一体何が違うのかよく分かりません。
しかし、やりようによっては興味深いものになる可能性があるかなという期待が若干あります。
といいますのも、私は「Second Life」が流行った当時、個人的にかなりのめり込みまして自作のコンテンツをいろいろと「Second Life」空間内で公開していたのです。一応、3DCG制作者の端くれなので、そこそこなお小遣い稼ぎにはなりました。
「Second Life」を「Oculus Rift」を使ってVR形式で見るという試みは昨年からありました。
しかし、ほとんど話題には上らなかったようです。
私自身、あまり興味は湧きませんでした。
それは、たぶん日本で「Second Life」が衰退していったのと同じ理由だと思います。
自由な空間なのは良いのですが、そこで何をするか、というところで立ち止まってしまうのです。私のような3DCG制作者はそれでも創作活動を試みるという道がありますが、一般のユーザーにしてみれば、リアルタイムな3D空間であるだけでは楽しみ方を見つけるのが困難なのでしょう。
「Second Life」がはやらなかった理由はいくつも挙げられてきましたが最たる理由は、
「3D空間に入ることの魅力が乏しかった」
ということに尽きるのではないかと思います。
当時、「Second Life」が流行りかけた時、
(さまざまな面白い場所に行ってみよう)
というアプローチから始まりましたが、結局は
(コミュニティを楽しもう)
ということを落ち着きどころにしていたように思います。
しかし、コミュニティを楽しむなら必ずしも3D空間である必要がありません。
高いスペックのパソコンを買うのも、アバターを着飾るのに仮想通貨を支払うのも、ある意味では面倒な手間です。
結局はテキストベースのSNSの手軽さと便利さには勝てなかったのでしょう。
それでもあえて3D空間を使ってもらうのなら、
(1) コンテンツの美しさが相当すごいこと
(2) 3D空間に入る目的が提示されていること
という2点が欠かせないのではないかと思います。
さて、今回のニュースで紹介されている「Sansar」ですが、わざわざ「Second Life」とは別に開発するということであれば、上記2点を意識したものになるのではないかと推測し期待しています。
たとえば「Second Life」とはまったく別空間にし、コンテンツは運営側の審査をパスしたものしか公開させないというやり方もありうるでしょう。
「Second Life」のように、まともに作られた場所はごく一部で、ほとんどが素人が勝手に作ったデザイン性の低い場所というのでは、わざわざ高価なOculus Riftを買ってまで入ろうという人はいないでしょう。ユーザーが作った衣装やアクセサリなどの販売アイテムについても同様に高いクオリティを要求すべきではないかと思います。
そして、「臨場感を生かした大規模なゲーム」「リアルなVR教育を体験するプログラム」など、3D空間に入るための「目的」あるいは「楽しみ方」を運営側で提供し明示すべきでしょう(もちろん、一定レベルの3rdパーティーでもOK)。
自由勝手に制作できないのであれば「Second Life」の良いところを消してしまう、ということになるかもしれませんが、それを逡巡するならばわざわざ別に開発する必要はありません。
ユーザー体験を運営側がかなりの程度コントロールするかわりに、クオリティの高さで満足させられる仮想空間プラットフォーム、というものになれば、Oculus Riftとの合わせ技で面白い存在になりうるかもしれません。
そんな風になるかどうか注目したいところです。